【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
5.明日は来るから -恭也-
松崎の勤める病院から自分の足で歩いて
神楽と真人の行方を辿るものの
歩いても歩いても
その場所に辿りつかない。
最初の地震の発生から丸1日過ぎた今も
余震の大きな揺れが襲い掛かり
救助が遅れている現実を知った。
歩き続けて六ヶ所目の
避難所を回った時、
充電の少なくなった携帯が振動を伝える。
混線状態が続いている
携帯電話が繋いだ相手は、
雄矢の名前だった。
「もしもし、雄矢?
どうした?」
「政成兄さんと、宗成君と一緒に
俺も来たんだ。
俺が居る病院に
今、真人君が運ばれて来た。
こっちは俺が対応する。
だからお前は、神楽さんを見つけ出せ。
恋華が伊舎堂の人員導入して、
一緒に神楽さんの行方を探している。
連絡が入ったら、
また連絡する。
真人君が居るのは……」
雄矢は真人が搬送された
病院の名前だけを告げて電話を切った。
真人は雄矢に任せておけばいい。
後は、
神楽さんを探し出さなきゃ。
必死に言い聞かせて、
息子の元に駆け出したい想いを抑えて
最愛の彼女を探すために瓦礫に囲まれた街の中を
走り続ける。
手掛かりの住所を手掛かりに。
建物の倒壊が激しくて、
目印すら見つけられないそんな街中を駆け抜けて
辿りついたその場所には、
レスキュー隊の人たちが、
慌ただしく作業をしていた。
「あのこの場所は、この住所の辺りでしょうか?」
住所の紙を見せて問いかける俺に、
慌ただしそうな隊員はチラリと視線を向けて
頷いた。
「すいません。
ここに家族が住んでるんです。
ここに住んで居た結城神楽さんと言う女性を
知りませんか?」
「中学生の男の子は、先ほど救出して
病院に搬送しました。
今も、この下には少年の母親らしい女性が
瓦礫の下敷きになっています」
取り乱すように問い詰める言葉に、
冷静にレスキューの人たちは告げた。
その言葉に居てもたてもたまらなくなって、
レスキュー隊員を振り切って、
その場所へと駆け出す。