【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
「神楽さん、帰ろう」
恭也君の言葉に静かに頷いた。
恭也君に支えられるようにして、
女子トイレの前から
テーブルの方へ移動すると、
皆の視線は一気に私たちの方へ集中する。
「悪い。
彼女、体調崩したみたいだから
送ってくよ。
皆、ゆっくりと楽しんで」
そう言うと恭也君は、
私の鞄を座席から掴み取ると、
店を後にした。
店を出てすぐに、
スマホを触ってタクシーを呼び寄せる。
迎えに来たタクシーに乗り込んで
向かったのは……私の自宅。
タクシーの中、
何時の間にか……
後部座席で、彼の膝枕で横になるように誘導された私は
ふわふわする意識の中、
ゆっくりと目を閉じていた。
彼の体温が私の肩をトントンと叩く掌から伝わる。
暫く……彼の膝の上でウトウトしてしまった私は、
彼が体が揺する行為で覚醒した。
「神楽さん……。
起きて……家、着きましたよ」
そう言った恭也君。
えっ?
恭也君と、もう離れるの?
今は……離れるのがとても寂しくて。
恭也君の上着の袖口を掴んで
俯きながら告げる。
「……傍にいて……。
今は一人は嫌なの……」