【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

9.彼の居ない日 - 神楽 -





合コンの夜。



多分……私がねだって
彼と繋がったはず……。




なのに……何も覚えてない。






寝起きで見つけた、
彼が私を気遣う優しい文字がすごく嬉しかった。





『謝らなきゃ』



そう思う気持ちと、


『もう一度逢いたい』




そう望む私。








そう、出会った時から彼は
私にすごく優しかった。




その優しさは……
麻薬にも似て……
私をドンドンと
その優しさの中へと
引きずり込んでいく。






私が失った……
求めてた時間が、
その中には潜んでた……。






彼といる時間は、
私の寂しさを彼のぬくもりが
包み込んで隠してくれる。







私のほうが年上なのに……。





しっかりしなくちゃ行けないのに。






彼にどっぷりと浸かって
彼を求め続けてる私が
ここに居る……。







次のレッスンの日。





彼は来なかった。







せっかく気合いをいれて、
メイクをして
新しく新調した香水をつけて
望んだのに……。







大学が終わって、
いつものように教室に顔を出した私に
パートナーが告げたのは、
彼のお休み。





途端にテンションが下がった。







こんなにも彼が居ると、居ないで
私の感情が大きく揺れる日が来るなんて。








今日の予定のレッスンを済ませて、
生徒の連絡票のファイルを手に取る。





開いている頁は、
恭也くんの連絡先が記されている頁。



達筆なのに私とっては
優しい文字で記された
その文字を指先でなぞる。





ここにかければ……
彼と話せる。





恭也君の声が聴ける。



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