【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
11.私の過去 - 神楽 -
もう大丈夫だと思ってた……。
私はあの人たちにとって
必要のない子供だったのに……。
どうして?
どうして……今も
私は期待をしてしまうの?
- 回想 -
私には……
家族が居るようで居なかった。
両親は世界的にピアニスト。
私と妹を産み落とした母は、
常に私と妹をピアノで競わせた。
両親が必要なのは、
自分たちの後継者を育て上げること。
私と妹を育てたのは、
父の祖父母。
時折、海外から帰国して
姿を見せた両親からの言葉は
いつも同じ言葉だった。
『ピアノの練習はしているか?』
『何処まで弾けるようになった?』
父方の祖父母の言葉も
機械のように同じだった。
『神楽、どうしてそこが弾けないの?
貴方のお父様は、
そんなところもっと小さい時に弾けてましたよ』
『神楽。
お父様をもっと喜ばせてあげないといけないよ』
家の会話は……
海外に居てなかなか帰宅しない両親を
喜ばすために、ピアノを頑張りなさいと言うこと。
ピアノだけが……
家族を繋ぐ細い細い糸みたいだった。