【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
祖母の家で暮らすようになった
2年後、私は祖母の養子になった。
あの人たちに気に入られて、自慢の子供になった
妹は……コンクールにも優勝して、
二人の自慢の芸術作品として、
マスコミの話題をさらっていた。
ピアノと向き合うことすら出来なかった私が
再び、ピアノと向き合うようになったのは
ピアノを弾いている時間が、
どんな形にしても、
家族の時間を思い出させてくれるから。
私は孤独ではないのだと
語りかけてくれるから。
そして何よりも……
私が私らしく入れるのだと感じられたから。
祖母の家で、
両親からプレゼントされた最初で最後のピアノを
何度も弾きこみながら、
今も音大へと進学して……
ピアノに携わる仕事をしている。
本当は……
認めてほしいだけ。
抱きしめてほしいだけ。
どれだけ求めても、
得られることのない思いは
いつもは……蓋をして
気づかないふりをしているのに、
時折、こうやって暴走してしまう。
息苦しくなるたびに、
自分で自分をしっかりと抱きしめるのに……
その寂しさは、
なかなか埋まってくれない。
両親に選ばれなかった
欠陥品の私は……
今もこうやって、
幼い日の傷を抱えて
隔離された……
家族に幻想を重ね続ける。
私が求めるのはただ一つ。
偉大なピアニストの
両親が欲しいわけじゃない。
父のその手で、
母のその手で……
ただ黙って、
抱きしめてくれるだけで
私は十分なのに……。
その願いは……
叶うことのない……願い……。
幼い日の私の
寂しさは……
今も消えてはくれない。