【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
第二楽章 愛の夢
1.夢の時間-恭也-
大学の講義が終わると、
親友の雄矢や勇生の傍に顔を出す。
「恭也急いでるの?
今から、リズちゃんや美雪ちゃんと
お茶しようって言ってるんだけど、
良かったら、神楽さんも呼んであげなよ」
勇生が俺にそうやって話しかける。
リズちゃんって言うのは、
親友、鷹宮雄矢の彼女。
美雪ちゃんって言うのは、
西宮寺勇生の彼女。
深雪女史は俺たちと同じ医大の同期生。
恋なんてする余裕もないだろうって
周囲から散々脅されながら、
日々の大学生活に追われながらも
俺たちは、
それなりに恋にも充実した時間を過ごしていた。
俺はと言えば……
今も、年上の彼女。
神楽さんとの時間は続いている。
神楽さんが俺の家で、脳卒中で体を不自由になってから
家事を手伝ってくれながら、
過ごし続けた音大卒業までの二年間。
音大卒業と同時に、神楽さんは自分の家へと生活拠点を移し
バイトとして働いていた音楽教室で、
今度は正社員として生徒たちの指導を任されてる。
音楽教室である職場。
神楽さんの家、そして俺の実家。