【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



それと同時に待ち望んだように
電話がかかってくる。


「神楽、今駅についたから。
 
 何か欲しいものある?
 コンビニよってこうか?」

「あっ、じゃ飲み物買ってきて。
 今、我が家アルコール切らしてるから」

「了解。
 んじゃ、後10分くらいで行くよ」


電話を切ろうとした恭也に
思わず声をかける。


「あっ、あの……パンにする?
 ご飯にする?」


パンにする、ご飯にするって
自分で言ってるのに思わず照れてしまう。


脳内は、別の変換モード。



「えっ?
 お風呂にする?ご飯にするじゃなくて?」


切り返された言葉が
脳内変換そのままで、思わず固まってしまう。


「あっ、冗談だよ。
 神楽がの話し方が可愛かったから、
 からかいたくなった。ごめんごめん。

 パンより夜はご飯がいいな」

「わかった。
 じゃ、ご飯で準備しておくね」



そんな些細な会話ですら、
私には幸せすぎて。



時折、幸せでいいのかなって
そんな今に不安を感じることすらあるけど
それでも、恭也と過ごす時間は
私自身に何処までも優しかった。





 
10分後。

約束通り、我が家に辿りついた恭也は
ペロリと私の手料理を食べ終えて
ゆっくりとした時間を過ごす。



そして同じベッドで
体を寄り添わせて眠る。 


恭也が触れる指先に、
熱を帯びていく体は正直で……。



そんな甘美な時間が、
私をこの世界に溺れさせてくれる。



こんな時間が続けばいい。





なかなか進展することがない
私たち。 



だけど……少しずつ、
恋を育んで、愛に変化することが出来たら
その先の未来は
広がっていくのかもしれない。





その一月後、親友の文香は
IT企業の会社員の隣で嬉し涙を流してた。



文香の身を包んだドレスは、
新郎の母親がこの日の為にデザインした
フルオーダーメイド。

文香が選ぶものとは違って、
少し可憐さの残る
デザインだったけど
文香はとても綺麗だった。



そんな幸せな文香を
見つめながら、
私も何時か来る……
そんな日に思いを馳せていく。






その時が来たら、
私はどんなドレス選んで
彼の隣で微笑むんだろうって
そんな想像をしながら。





幸せでいいの?




その問いかけに答えは
帰ってくることはないけど……
今はこの時間を大切にしたい。



穏やかな甘い時間が、
何時しか愛に変わっていくまで。







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