【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



今、もし……
恭也にプロポーズされたら……。




そんな瞬間を待ちながら、
その瞬間が来なければいいとさえも今は思う。



彼を私の独占欲で潰してしまいたくない。




だけど……多分、
それは私の建前。




本当は……仕事を辞めて、
家庭に入ると言う選択を選ぶのが怖い。



選ぶのが怖いって言ったら、
言葉が違うかもしれないけど、
恭也を傷つけるから面と向かっては言えないけど
給料の差は将来を考えると大きいよ。



研修医の給料は、
正直少ない。

少ない給料に対して、
割に合わない仕事量。


彼と一緒に家庭に入って、
彼の子供が宿ってしまったら
私は、当然仕事を辞めないといけない。

家庭に入るために。



だけど……私が仕事を辞めたら
多分、生活はまわらない。




それに……年の差を気にする恭也だから、
多分、結婚して私が仕事を辞めて
生活費が足りないことを知ったら、
今以上に、仕事を増やして掛け持ちしてしまうかもしれない。



今でも少ない逢瀬の回数を
二人の時間を奪われたくない。









空回りの結婚願望。




夢だけは果てしないけど、
現実を考えた時、
踏み出す勇気なんてないままに
私と恭也の時間は流れ続ける。





その先の運命も知る由もないままに。








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