【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
そのまま恭也は、次から次へと葬儀の準備を進めて
病院を後にする。
その後も、やるべきことは多い。
役所への死亡届の提出。
火葬・埋葬許可証受理。
枕経の手配。
葬儀の打合せ。
やるべきことは次から次へと押しかけてきて、
恭也は、体の不自由な小母さんの代わりに
それらの成すべきことを確実に、こなしていく。
ねぇ、恭也……。
ちゃんと小父さんのこと、
受け止めてる?
今の恭也の姿と、
祖母を亡くした時の私がリンクする。
祖母を見送った時も、
近所の人の優しさに助けられて必死だった。
まだ若い高校を卒業して間がない喪主。
全てが終わって、
祖母の声が聞こえないその生活に
身を置いた時、
世界から拒絶されたような気がした。
何もかも静まり返った、
その時間に、心が苦しくなる。
お葬式までしたのに、
祖母が今もいるような錯覚が襲い掛かって
何度も、祖母の部屋へと食事を運んだりもした。
だからこそ……
今、その事実を受け止めて
弱さを見せないと、
ズルズルと流されそうな気がして。
別れの夜。
祭壇の前で線香を絶やさないように
気を配りながら、
ボーっと座る恭也。
「恭也……」
「神楽……
人って、呆気ないね」
恭也は小さく呟くと、
また無言で、遺影を見つめ続けていた。
取り乱すことなく、
機械的に葬儀を終えた恭也を次に襲ったのは、
その夜の事。
小父さんがなくなったことにショックを受けたのか、
小母さんがまた倒れてしまった。
慌てる恭也の傍には、
式に参列していた多久馬医院の看護師もしてた
勇生君のお母さんが手伝う。
求められる医療器具と薬を即座に手渡して、
小母さんの治療を終えると、
恭也君は、
小母さんを自室のベッドで休ませた。