♥ラブ・ルーム♥ー甘いキミとの奇妙な監禁生活ー
慌ててバスルームに向かった彼女が、無造作に置いた携帯をそっと拾い、画面を開いた。
『着信 収史さん』
ディスプレイには、そう表示されていた。
収史さん?
しゅうじ?まさし?
誰?この人……。
幼なじみの結菜のことは、何でも知ってるハズなのに、
ディスプレイに表示されているこの人物はまったく身に覚えのない名前だった。
結菜の涙と、
結菜がここに居たがることと、
結菜が理由を聞いても頑なに口を閉ざすことと、
『収史』という、俺のまったく知らない人からの電話。
「……っ…く……ひっ……。」
シャワーの音の向こうで、また結菜は声を出して泣いている。
気持ち悪いくらいざわつく胸のモヤモヤを閉じ込めるように、俺は結菜の携帯の電源を切った。
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