無題



お客さんは男の子だった。

学生服を着ていて、上は紺色のブレザー、下は灰色のズボン。

おまけに腰パンをしていて、ズボンのお尻がだぼっとしている。

まさに最近の男子高校生って感じ。

あたしは頬杖をたてて見ていた。

「あの、個人練習したいんですけどー...」

男の子はえりネェにそう言うと、えりネェは何やらノートらしき物を取り出した。


「じゃあここに名前書いてください。何時間のご利用ですか?」

「2時間でお願いします」

「はい、わかりました〜」

男の子は名前を書くと、戸惑いもなく練習部屋へと入って行った。


しばらくしてからえりネェを呼んだ。

「...ねぇ、えりネェ」

「なにー?」

「今の男の子、楽器持ってなかったからきっとドラムやってるんだろうね」

えりネェは少ししてから答えた。

「あー、ギターとかベースを背負ってなかったからね」

「うんうん。あと、こういうスタジオとか行くとき、ドラムの人は荷物が軽いから楽なんだよね〜」

「確かに、スティックだけだもんね!」


それからもたわいもない話をしていると、気付けば6時をまわっていた。


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