無題
あたしは服に着替えて顔を洗い、支度を済ませると家を出た。
冬の風がなんとも寒い。
救いとなったのは、雲の隙間から漏れる太陽の光だけ。
「もうー!!頼みって何なの?!」
ブツブツ言いながら、それでも休むことなく自転車を走らせる。
自転車でおよそ20分すると、えりネェの待つスタジオが見えてきた。
到着すると、あたしはスタジオへと駆け込んだ。
「えりネェ!頼みって?!」
「あ、ミオちゃーん!」
えりネェはあたしに気付くと、駆け寄りこう言った。
「3時間だけ、ここの店長になってもらえないかな?」
「はあ?!」
あたしは抜けたような声をあげる。
「お願い!あ、ミオちゃんこれ見て!」
えりネェに見せられたのは一枚の広告のようなチラシだった。
「実はこの店、今日限りで野菜から何まで激安なのーっ!私チビの子供いるし、子供用品なんてこんな安くなることないし...」
必死に訴えるえりネェ。
「...つまり、あたしがその間、店番してろと?」
えりネェは小さく頷くなり、手を合わせて一言「お願い」と言った。
まぁ家にいてもすることないしな...。
「じゃあ3時間だけだよ?」
そう言うとえりネェは明るい表情に変わり、ニコリと笑った。
「ホント?!ありがとう〜!」
「でも店番って何すればいいの?」
あたしに店番なんてつとまるのだろうか。