聖しこの夜、君と2人で
「雪帆には、言えない」
なんで??どうして??
あたしには言えない理由って、何??
不安は募るばかりで、見えない何かに身体が覆われていく気がした。
「っ……」
泣くな。
「本当、悪ぃ…」
泣くな、あたし。
「だいじょ、ぶ」
泣くな。
必死に涙を堪えて、燈真の前ではいつでもとびきりの笑顔を見せたくて。
だけどそれは叶わないの。
ポタッと零れた一滴の雫。
あたしの涙が零れて、廊下に小さな鏡を作った。
涙って不思議だよね。
一度零れてしまえば、もう我慢したくても溢れ出てしまう。
あたしの目から零れる涙は、廊下に出来た鏡を歪に大きくしていった。
…あたし、なんで泣いてんだろう??
なんでこんな顔してんだろう??
なんで泣いちゃったんだろう??
ゆっくりと顔を上げると、バツの悪そうな燈真。
だけど彼が理由を言う事はなく、そのまま背中を向けて去っていった。