幸せになりたい女
 卓ちゃんは遊び人だけど、いつかホントの恋して、一人に絞るよね・・もしかしてやっぱりそれは・・美久かもしれないのかな。

 甘い期待が顔を出す。出会った頃、確かに感じた運命。

 勝久くんと外国に行くのなんて、現実的じゃないし・・大体ヨーロッパとかなら別によかったけど、アフリカなんてなぁ・・。
 卓ちゃんが美久をもう一度求めてくれたら・・そう思いながら卓ちゃんを見つめた。
「今日はどこに泊まるの?」
「・・弟んとこだよ」

 前と同じように二人の部屋に二人で帰ってもいいのに・・。

「ねぇ・・今日は、部屋に来れば? ・・まだ卓ちゃんと美久の部屋のまんまだよ・・こっからだと美久たちの家のほうが近いんじゃない?」
「まぁ・・そうだな。まだオレの家でもあんだしな」
 言ったあと、テレたみたいにトイレに行った卓ちゃん。可愛い。やっぱり卓ちゃんは魅力的!美久のツボをついてくる。


 待ってる間に勝久くんにメールを打った。
《明日も残業で会えないかも》
 返事はすぐ来た。
《残念! 残業? 体壊さないように頑張れ! オレも負けないように頑張る!》
 能天気なキラキラした文面にちょっと罪悪感。
 でも、どうせいなくなっちゃう人だし・・。
 携帯の画面を見ながら、なんて返事を出そうか考えてたら、テーブルの上に置いてあった卓ちゃんの携帯が静かに光った。グリーンに光る小さな液晶画面を覗くと、「恵梨香」の文字。

 知らない名前・・。

 また胃が痛くなってきた。お肉がお腹の中で暴れてるみたい。

「待たせたな。じゃあ、帰るかぁ」
 美久は黙って下を向いたまま動かなかった。動きたくなかった。
「なんだよ? どした?」
 卓ちゃんが顔を覗きこんでくる。美久はむくれた顔を横にそらした。
「・・携帯・・なってたよ」
「あ? それがどうしたんだよ」
 卓ちゃんは面倒くさそうに携帯を開いた。チラッとディスプレイを見る卓ちゃんの顔が一瞬止まったような気がした。
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