幸せになりたい女
THREE
 卓ちゃんと同棲して半年。もうすぐ卓ちゃんと初めての冬を迎える頃、卓ちゃんが美久中心じゃなくなってきたような気がする。気のせいだと思うけど。
「卓ちゃん、最近飲み仲間とばっかり週末過ごすんだもん」
「あぁ、同郷の子達でしょ?」
「弘子、知ってるの?」
「うん。あたしも一緒に飲んだことあるからねぇ」
 今日も卓ちゃんの話を聞いてくれる相手は弘子。ショップの女の子たちとは表面上の付き合いだけで、親友なんていない。きっと工事の現場の人と付き合ってるなんて引かれるに決まってる。
 弘子がカラカラと氷をならす様子を見ながら、美久はなるべく動揺していることがバレないように言った。
「ど・・どこで?」
「渋谷」
「ふ~ん・・同郷って宮城の?」
「そう。あそこの連中は地元の繋がりとか絆が強いよね。美久は地元ってどこだっけ?」
「千葉」
「近いからいいね」
「別に・・」
 近い分、いつでも会えるから、そんな絆強くないもん・・
「美久も行けばいいじゃない」
「・・そうなんだけど・・」
 美久だってその飲み会に参加したい。卓ちゃんの地元の人たちと飲めるって・・卓ちゃんの人脈の中に入れるって・・それってもっと卓ちゃんと美久の繋がりが強くなるってことだもん! 美久は何度も彼女としてそこに行きたいって言ったんだもん。なんで弘子が参加して、美久が参加できないの!

『美久のシラネェやつばっかでつまんねぇって!』

 美久が人見知りしないの知ってて卓ちゃんは言ってる。ショップでたまにくるクレーマーも美久としゃべると怒りが収まってくれるくらい、美久が人に好かれやすいって知ってるくせに! ホントに訳わかんない!
 あんまりしつこく言うと、最後は『ぜってぇ来んな!』って怒鳴られて、それ以上何も言えなくなる。
 それでも会話の中にたまに出てくる「ヒロコ」ってキーワードにヤキモキする美久に「弘子」を紹介してくれて安心させてくれたのは嬉しいんだけど。
 でもでもでも! 卓ちゃん・・弘子に美久のこと紹介するときに「友達」って言った!
『テレくさかったんだよ!』
 彼女がいると仲間内でからかわれるってよく言ってたし、イジられキャラって卓ちゃんのキャラじゃないからイヤなの分かるけど・・ちょっとショックだった・・でもいつかはちゃんと彼女として紹介するって約束してくれたから少し安心したけど。
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