幸せになりたい女
FOUR
 美久はヤケになってたんだと思う。でも美久は卓ちゃんを見返したかった。そして誰よりも美久が大切だって分かってほしかった。

「美久ちゃんはどこの出身なの?」
「千葉でぇす!」
悟くんの会社の同僚は勝久くんといって、美久より一個年上。証券会社で営業やってるせいか会話を途切れさせない。会社のサッカーチームに入ってて、体格もよくて、背も高いし、人懐っこい笑顔も可愛いし、来てよかったかも。
「千葉? オレ、よく千葉の海にサーフィン行くよ」
「ホント? どこの海?」
「千倉」
「うそぉ! そんなとこまで? 遠くない?」
「車で行くから、運転するのも好きだしさ」
「そうなんだぁ、美久は船橋だから、東京よりなの。海も近くにあるんだけど、そんなキレイじゃないから。海好きなのになぁ」
「今度一緒に行こうよ。千倉まで。冬でもサーフィンしに行くんだよ」
「ホント? でも寒くない?」
「美久ちゃんは車の中でオレのサーフィン見てたらいいじゃん。夏になったら一緒に海に入って、サーフィンも教えてあげるよ」
「やったぁ! 美久、サーフィンやってみたかったんだぁ」
「美久ちゃんってポワンとしてるけど、意外とアクティブなんだね」
「ヤダ、美久、ポワンとしてる? 結構スポーツ少女なんだよぉ」
「してる、してる。なんか天然って感じで可愛いもん」
 にっこり笑う勝久くん。卓ちゃんを見返してやるためだけにこのキャンプに参加したけど、ホントに勝久くんに恋してもいいかもしれない。ていうか恋しそう。会話が楽しい。久しぶりに楽しい!
 世の中には素敵男子はいっぱいいるんだ。卓ちゃんだけじゃないんだもんね。卓ちゃんなんか・・卓ちゃんなんか・・

 いつもだったら美久が男友達と飲みに行くっていうだけで怒ったりするくせに、このキャンプに対しては「ふうん、行けば、勝手に」だって! きっと自分も他の女の子と旅行に行くから何にも言わなかったんだ。しかも最後まで旅行に行くこと教えてくれなかった。そんな卓ちゃんはほっといて、美久は今を楽しんでやる。ホントに勝久くんと恋してやるんだから!
 後で後悔したって知らないんだから!

 でも後悔するのは美久だった。
 
 ヤケになって彼氏以外の人と遊びにいかなきゃよかった・・
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