‡仮想リアル‡


何てのほほんと思った矢先だった


「や、やめて下さいよ!」

ひ弱そうな声が耳に入ってきた
その声のボリュームは高く、ゲームセンターの煩い雑音の中でも良く通る声だった
俺は声がした方向に振り返る

振り返った先には、いかにも不良です!と言ってるような金髪の目付きの悪い三人組が、いかにも優等生と言うような眼鏡の少年に詰め寄ってるところだった


うわぁー、今時有り得ないシチュエーション
更に言わせてもらうと、こういう場面に出会すのもかなり希な気がする

「や、無いんです……もう…やめて下さい!」

「ああん?まだあんだろうが眼鏡の兄ちゃんよぉ」

「ほらほら、兄貴の手が出ない内に全部置いてきなッ」

不良はジリジリと眼鏡少年に詰め寄っていく
俺は辺りを見渡した

周りにいる奴等はこの状況に気付いているにも関わらず見てみぬふりをしている


──誰だってそうだ
皆がみな、自分が可愛くて、だから自分の身が危険になるようなところに進んで入ろうとしない


俺だって例外じゃない


所詮、他人だ
見てみぬふりをしているその他大勢と変わらなくしていれば良い


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