‡仮想リアル‡


えっ? 何かヤバくね?


「────あんまり調子にのんじゃねぇぞ」


直後、不良達の兄貴分は持っていた物──ナイフを振り上げゆっくり振り降ろす



俺は恐怖心のあまり声もでず、目を瞑る事した出来なかった



グシャッ


何かが刺さるような音が響いた
ゾクッと背筋に嫌な汗が流れる
しかし、何時になっても痛みは感じない



何で、痛く……な……い…?






「……おい、良い大人が餓鬼にナイフ向けて良いのか?いや、お前等は大人じゃねぇか」

低いアルト張の声質の声が耳に届いた
何処か呆れた調子のその声音は俺の近くで確実にハッキリと聞こえた

「朔ッ!」
「霜月くん!」

瑞樹と篠崎の声がハモるように聞こえて俺はゆっくりと瞳を開けた

「て、テメェ…な、何もんだ?」

兄貴分は動揺した声で言う
その顔は信じられないものを見るような驚愕な表情だった


「ふん……何って注意だろ?」

聞こえるその声は後ろから聞こえるものだ




な、んなんだ……?



不意にポタッと何かが頬に落ちた
それは生暖かい水のようなモノで──涙だろうか


それにしては何処か色があるような

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