‡仮想リアル‡
つか、こんな時に涙なんか流す奴が何処にいるんだよ?
「あー、悪い。血が垂れちまった」
その声に俺はハッとして頬についた水滴を拭う
確かにそれは血
俺はバッと後ろに振り向く
そこにはナイフを素手で握っている男が立っていた
年齢からにして20代前半と言ったところだろうか
いや、そんなこと何かどうでも良い
俺は目を見開く
「なっ……その手!」
驚く俺に若い男は淡々と言う
「ああ、これ?ナイフ掴んだから血がな」
「いや、俺が言いたいのはそういう事じゃ……」
「ん?ああ、もしかして助けたことか?……大人が子供守んのは当たり前の事だろ」
それは然も当然と言う口振りだ
今時、教師でもそんな事は言わない
俺はあまりの驚愕に声が出なくなる
「まぁ、気にすんなよ……それより」
男は淡々と言うと不良達の方を向く
不良達は一瞬ビクッとした後、
「お前等わかってんだろう?」
その言葉を合図にするように男の異質な存在感に恐れをなしたのか不良達は逃げ出した