距離と壁
第1章

撮影時と君の姿




「次、spirit!!さん入りまーす」

spirit!!になって4年が過ぎ、5年目になろうとしていた。芸能生活も今じゃ普通の生活。

「まず、天草君入りまーす」

侑「よろしくお願いします!」


メンバーを残して元気にスタッフさんやカメラマンさん方に挨拶をしながら、セットされてるスタジオに足を踏み入れた。


「今日も天草君は元気だな」


元気に挨拶をする僕を楽しそうに、そしてどこか優しそうに笑うスタッフ一同。


そんなに可笑しいかな…?


ま、僕は元気が取り柄だからそんなの気にしないけどね。

余裕の笑みを浮かべてカメラの定位置に立つ。


僕が立つセットの周りは黒で統一されている。そして衣装は僕が普段着ないであろう赤に黒を添えたクール系。


うん。これ、絶対僕には似合わないな。


似合うとしたら、明るい系かシンプル系だと思う。



「あら、意外とクールな衣装も似合うのね!」


意外と…って、やっぱ絶対に似合ってる訳ではないんだな。

スタイリストさんに苦笑いを向け、再びカメラの定位置に立つ。



ーーーーけど、何もしない自分。


デビューする前からカメラの前で色んなポーズをするのは苦手で、それは今でも変わらない。

一つ一つ違うポーズをとるという事が出来ない僕は、いつもカメラマンさんに指示を出されるまで何もしない。


だから今日も指示を待つ。



「じゃ、切ない感じでお願い」


そう言われた瞬間、さっきまでの元気が一瞬で無くなった。



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