私をブー子と呼ばないで
 翔太と二人きりになると、急に静かになった気がした。

 途端に、何を話したらいいのかわからなくなる。

 考えてみれば、いつも智美が話題を振ってくれてる。

 智美がいないと、幼馴染なのに話す話題が消えてしまう。

 隣を歩いている翔太は、ネクタイを緩めると「はあ」っと白い息を吐き出した。

「すっかり寒くなったよなあ。ブー子、寒くない? 平気?」

「あ、うん。大丈夫」

 会話が途切れる。

 コツコツと私の踵が鳴るのが響く。

「そう言えば、翔太ってあまり実家に帰ってないの?」

「今年はお盆に帰ったきりだなあ。年末年始も行けそうにないって連絡したらさ。今日、帰ってこいって言われたんだ」

「仕事で?」

「まあね。それに実家に帰ってもやることないし」

「そうなんだ」

「一人暮らしって言っても、遠くに住んでるわけじゃないから。電車に乗れば30分だよ? いつでも帰れるから」

「でも帰ってないんでしょ?」

「まあ、そうなんだけど」

 あはは、と翔太が笑った。

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