私をブー子と呼ばないで
 翔太がそれから家に帰って来たのは、夜の10時を過ぎてからだった。

「ごめん! 本当にごめんね」

 翔太が何度も何度も私に謝ってくる。

「平気だって。私、怒ってないよ? 仕事大変だったね。疲れているだろうから、私……帰ろうか?」

「え? 駄目ダメ。夕飯、一緒に食べようよ」

「翔太がそれでいいなら…」

 翔太がにっこりと笑った。










 翔太が手際よく夕食の準備をしてくれて、私たちは一緒に鍋を囲んだ。

「翔太、良かったの?」

「何が?」

「今日はクリスマスイブだよ?」

「知ってるよ」

「一緒に過ごしたいっていう女性が他にもいたんじゃない?」

「まあ、いると思うよ。何人かに誘われたし」

「え?」

 ん? と翔太が顔をあげた。

「一緒に鍋を食べるの相手、私で良かったの?」

「良いよ。だって誘ったの僕じゃん」

「そうだけど……」

 
< 20 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop