私をブー子と呼ばないで
 誘われた人がいるなら、そっちと過ごしたほうがいいんじゃ……

「ブー子の食べている姿、大好きだよ」

 翔太がにっこりと笑った。

「それって…食べっぷりがいいから?」

「そう! 美味しそうに食べてるからさ。見ててこっちも元気になるんだ。イブの日くらい、美味しく食べたいじゃん」

 美味しく……ね。

 食べっぷりの良い女を目の前にして、翔太は元気になるんだ。

 なんだかそれって、ちょっと複雑な気持ちだなあ。

 女として、見られてないって気がする。

 まあ、付き合ってもないのにいきなり部屋にあげるんだから、女として見てないんだろうけど。

「ブー子、今日は泊まっていく?」

「え?」

「もう遅いし。泊まっていけば?」

 翔太が時計に目をやって、口を開いた。

「明日も仕事だし」

「朝、送っていくよ」

「ええ? それは悪いって」

「平気だよ。僕に今夜のお詫びをさせてよ」

 翔太がにっこりと笑って、私の手を握ってきた。

 え? お詫びって……なに?

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