私をブー子と呼ばないで

「けっこんっ！？」

　私の声が裏返る。

「ちょ…ちょっと待って」

　私は翔太の腕を掴むと、スーハーと深呼吸をした。

「莉子、３０歳までには結婚したいって言ってたから。僕がその夢を叶えたい」

「ええ？」

　確かに。ずーっと昔に、そんなような理想論は述べたけど。

　それをずっと翔太は覚えていたの？

「翔太、なんで急に…」

「急じゃないよ。ずっと想ってた。けどなかなか莉子に告白できなくて。やっと言えた。僕は莉子と結婚したい」

　翔太が満面の笑みを見せる。

　本当に幸せそうな表情に、私は次に出す言葉をすっかり忘れてしまう。

　ずっと想ってた？って、私を？

　翔太が、私に片想いしていたの？

　信じられない。

　だって仕事もできて、エリートで、高学歴で……。

　誰もが羨む容姿を持っている翔太が、私を？