私をブー子と呼ばないで
「そりゃ良かったな」

 翔太が財布を胸ポケットに仕舞う。

 私も財布を大きな鞄の中に入れると、前を歩く翔太と智美の背中を見つめた。

 本当に、お似合いの二人だなあ。

 美男美女カップルっていう言葉がぴったりだ。

 どうしてその輪の中に私がいるんだろうって不思議に思ってしまうくらい。

 智美がスマホを出すと、帰りの電車の確認を始めた。

「おおっ。ちょうどいいのがあるよ。翔太、急ごう」

 一人暮らし組は、電車で帰宅をする。

 智美も翔太も、方向が同じだ。降りる駅が違うけど、いつも私は駅でお別れだ。

「ああ、ごめん。俺、今日は実家に帰る予定なんだ」

「あ、そうなの? 明日も仕事があるのに?」

「まあね。智美とブー子で飲むって話をしたらさ。たまには帰って来いって言われたんだ」

「ふうん。翔太、あんま家に帰ってないって言ってたもんね。じゃ、私は帰るわ」

 バイバイと大きく手を振りながら、智美が駅のほうへと早足で向かっていった。

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