はだかの王子さま
 そう言ったとたん、だった。

 星羅の滑らかだった白い肌がふわっと光り、眩しさに目を細めた、次の瞬間。

 彼の左手の指先から、肘までの間が毛皮に包まれたんだ。

 星羅の……星羅の左腕が、変わってゆく!

 彼の顔も、カラダも、反対側の手も、そのまんまで。

 左腕だけが変わる。

 腕はふさふさで金色の毛並みが生えそろい、太さが倍になった。

 指先には爪が、五センチ以上は飛び出している。

 その、左手の姿は、もはや、人間の腕ではなく。

 さながら。



『獣(けだもの)の腕』



 けれども……なんて、キレイ、なんだろう……

 明らかに、人間の手じゃないって、見れば一発でわかるのに。

 怖さよりも、愛しさが先に立った。

「……星羅の手だ……
 脱ぐって、人の皮を脱いで、獣の姿になることだったのね?」

「ああ。
 本当は、人の姿も、こっちの手の方も、どちらも『僕』なんだけれど。
 真衣の好みは、獣の方なんだね」

 やっと、真衣の笑顔が見れたって。

 ほっとしたように微笑む星羅に、わたしは、自分から抱きついた。

「人間の星羅も好きよ?
 だけど、この毛並みって、すごく……好き。
 だって安心するんだもん」
 
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