はだかの王子さま
 星羅と初めて出会ったのは、フェアリーランドの地下迷宮だ。

 その時の星羅は、人の姿になれなくて。

 毛むくじゃらの怪獣みたいな獣(けだもの)だった。

 星羅は、ロウソクの揺らめく、大昔の、ヨーロッパにあった仕立て屋さんみたいなデザイン工房で、ただ独り。

 黙々と色鮮やかなドレスを作ってた。

 そこへ、フェアリーランドに勤めてる父さんを探しに来た、わたしが迷い込んじゃったんだ。

 そんなわけで、わたしの見慣れた星羅は、狼が二本足で歩いているように見える、獣の方だったから。

 彼がわたしを正式な彼女にしてくれた、去年のクリスマスイブの夜。

 人間の姿を手に入れ。

 ずば抜けてキレイになり過ぎた人間の星羅に、苦しいほど緊張して、困ってたんだ。

 わたしの、凍るように止まっていた思考が。

 見慣れた、星羅の優しく、強い獣の手をみて、ほっとゆるむ。

 その、キレイで毛足の長い毛皮は、絹や、アンゴラみたいな、高い布地より、もっといい。

 いつまでも撫でていたい触り心地に、一瞬ぼうっとなり。

 わたしは、はっと気がついた。

 ここ、ファミレスじゃない!

 しかも、不思議なコトがなんでもあり、なフェアリーランド内、どころか。

 キングダム・リゾートの中でもない、フツーの、ファミレス!!
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