はだかの王子さま

 ……とか、って思っていたのに。

 結局じーーっと固まったまま。

 星羅の着替えから目を離せずにいて。

 ……思わず、ため息をついた。



 なーんだ。

 狼の方になるんだ。



 それが判って、わたしの金縛りが解ける。

 どうやら獣の姿になるのに、着ていた服が合わなくなったみたいだ。

 本人は窮屈だから『服を脱ぐ』んであって、他に何にも考えてないんだろうけど!

 わたしは、あわててくるりと後ろを向くと、リビングのソファーの背もたれを平らに広げた。

 べ……べっっつに、ねぇ。

 ヒューマンタイプじゃないのは、ちょっと、残念かも……とかって絶対思ってないし!!

 星羅の着替えを見てると恥ずかしいから、何かやってごまかしているわけじゃないもん!

 四本足の姿で、椅子に座るのは、無理だからだもん!

 慣れた手順でソファーをフラットにすると、シングルベッドより広くなった場所に、星羅は飛び乗った。

 服を脱ぎ、ほとんど完全な狼の姿になると、星羅は、すごく身軽だ。

 今だってスプリングの音一つ、させることもない。

 そのまま、星羅はうつ伏せに寝転ぶと、ふさふさの尻尾をぱたぱたぱたっと楽しそうに振った。
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