はだかの王子さま
 だからと言って、熱がある星羅に、洗っただけのリンゴを『はい』と丸ごと出せない……よね?

 いっくらココロが籠ってたって、乱暴すぎる。

 できれば、目の前にあるだけマシな菜っ切り包丁を、普通に使いたいんだけど、どうかな?

 触るな、って言われてるけど、いきなりじゃなければ……ぴゅーっと飛んで行ったりしないかな?

 リンゴを握り締めたまま、困っていても、時間ばかりが過ぎてゆく。

 仕方がないので、とりあえず、使って良いか『本人』に聞くことにした。

「ええっと……リンゴをむきたいので0さん、使って良い?」

「……」

 返事はない。

 そりゃあ、そうよね。

 普通はね、菜っ切り包丁に話しかけても応えてくれるはずないもん!

 でも『嫌だ』とも言われなかったので、そっと菜っ切り包丁の柄に触ってみた。


 ……暖かい。


 触った直後、一瞬、ぴくん、と動いたような気がする。

 でも、どう見ても安物の包丁の柄は、なんだか温かみがあって。

 しっかり握るとそのまま、特に逃げ出しもせず、手になじんだ。


 い、意外~~

 賢介には、自分を包む鞘や、柄にも触らせなかったのに。

 この包丁の柄の部分も『0』の本体のはずなのに、特に嫌がることなく手に収まってくれたのは。

 やっぱり、正当な持ち主のお父さん……フルメタル・ファングの娘だからかしら?

 
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