はだかの王子さま
 
 ぱこっ☆


 そんな、可愛い音がして、獣の手が脱げて。

 下から、白く滑らかな人間の手が、出て来たんだ。


「「おお~~」」


 なんて、上がったどよめきに、星羅は、ほほ笑むと。

 そのまま、脱いだ皮を、軽く空中に放りだし、たった一言つぶやいた。

「炎よ」

 すると。

 毛皮は、マジックショーでのハンカチみたいに、閃光と炎をあげて、一瞬で燃え尽きる。

 それは、スプリンクラーも発動しないほどの早業で。

 後には、灰の一粒どころか、煙の臭いさえもしない。

 まるで、毛皮が空間に呑み込まれたようにさえ、見えた。


 おおおおおお~~!!


 一部始終を見ていた、お客さんのどよめきは、さっきより大きくなって。

 ぱちぱちと、拍手が広がった。

 みんなびっくりした顔で、喜んでる。

 そのことに気を良くした星羅は、片目を瞑って、わたしにささやいた。

「シルク・ド・セイラ、ワンマンショー?」

「莫迦ねっ!」


 まったく、もう!


 呆れてささやき返すわたしに、星羅はぺろっと舌を出すと、帽子をとって挨拶した。

 すると。

 長く、メッシュの入った金髪が、さらさらと、こぼれて落ちて。

 肩に砕けて背中に流れ……店内の照明に、キラキラ輝いた。

 それだけで、拍手が更に大きくなる。



 イ…イケメンって、得よね。



 それに、まるで。

 本物のサーカスの一員みたいだ。
 
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