はだかの王子さま
 それから、アンコールを断って。

 興奮していた店内が落ち着くと。

 星羅は髪をまとめて、帽子に隠し、何事もなかったかのように、イスに座り。

 さっき、ウェイターから、出されたわらび餅を竹ホークに刺した。

「ここのファミレスの和スィーツって、どれも当たりなんだ。
 特に、このわらび餅なんて、最高。
 真衣も、食べるー?」

「食べるー?
 じゃないでしょ、星羅!!?」

 わたしは、星羅に言って、ぐっと声を落とした。

「……一体、それのどこが手品なの、って……むぐむぐ……」

 セリフが途中になっちゃったのは。

 小言を言おうと開けたはずのわたしの口に、星羅が、わらび餅を、放り込んだからだ。

「え~~
 だって、ちゃんとタネも仕掛けもあるじゃないか。
 人の手からの左腕は、僕の意志による、細胞配列の変換だし。
 次に毛皮を脱いで見せたのだって、獣から人への、ただのヒューマン・アウトだし。
 僕は、色々、人の姿になるのに苦労したけど、変身する人にとっては、普通~~なことだよね?
 あ、最後に、皮を燃やしたのは、珍しかったかな?
 僕は、最高位の炎狼だから。
 たかが、毛皮とはいえ。
 あんな短時間で、煙りまで燃やし尽くせるんだけど~~?」

 何よ!

 その『ほら、タネを明かせば簡単だった』みたいな言い方!

 
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