はだかの王子さま
「それ、普通の人間は、一つもできない不思議なことなんだけど?」

「普通の人が出来なくて。
 不思議に見えることをショーにしたのを『手品』って言うんじゃなかったっけ?」

「うう~~ん。
 確かに、その通りなんだけど、なんか、違う感じするなぁ……」

 美味しいわらび餅を飲み込んで、ぶ~~って言ったら。

 星羅も、残りを食べ食べ、首を傾けた。

「そうだっけ?」

 全く、緊張感のかけらも無く。

 の~~んびり。

 この技を使うと腹が減るんだよな~~なんて言う彼に、頭を抱えれば。

 星羅は、にこっと笑う。

「これ、が、手品かどうか謎で、続けたら騒ぎになるって言うなら。
 しかも、真衣が獣の姿の方が、落ち着くって言うならさ。
 これから、二人で、誰もいない静かな所に行こうよ」

「……え?」

 その言葉に、思わず星羅の顔を見上げれば。

 獣の腕を見せた時と同じように、全く何でもないことみたいに星羅は、言った。

 確かに。

 狼姿の星羅と会う時はいつも彼の家。

 フェアリーランドのデザイン工房よりもさらに地下。

 迷宮の果ての部屋に、二人きりで会っていたけどさ。
 
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