はだかの王子さま
本当の婚約者
ガギャアウォォォオン……!!
何コレ!
怪獣の……雄叫び……って言うの?
わたしは今まで、こんなに大きい『音』を聞いたことがなかった。
『音』の振動は、空気だけでなく、地面を震わせ、細かい地震みたいに、全身を這い上がって来る。
『ぎゅ!?』
『ぎゃ!?』
『ぴぎゅっ!?』
あまりに凄まじい『音』に、家の雑貨に化けているゴブリンたちも、驚いたらしい。
頭や手足、尻尾を次々出して、家中をとたとた走り出したぐらいだ。
かなり防音が効いているはずの家の中でさえこの騒ぎなのに!
外は、どうなってるんだろう!?
外の様子が知りたくて、玄関先に飛び出そうとしたら止められた。
星羅に、後ろから抱きしめられるように腕を回されたんだ。
……ドキ
心臓が、飛び跳ねる。
じわん、とカラダが熱くなる。
そんな場合じゃないのに!
わたしは、こんな大変な時に、変な事を考えている女のコじゃないよって、星羅の腕からするり、と逃げるように離れた。
その時ちらっと星羅の顔を一瞬、見上げられたけれど。
星羅が、一瞬、凄く怒ったような、哀しいような複雑な顔をしたのをわたしは、見た……気がした。
でも、次の瞬間には、彼は、元々の星羅の表情をして、声を出した。