はだかの王子さま
『フルメタル・ファング!
 シャドゥ・スパイダー!!』

 0が、画面に向かって怒鳴った。

『てめーら!
 そんな所で、ナニやってるんだ!!』

「ええええっ!
 これって、やっぱりお父さん!?」

 驚いて星羅を見れば彼は、わたしに頷き、0に言った。


「0。これは、実況中継みたいだけど、テレビだから、聞こえないよ?」

 難しい顔をしたまま。

 やっぱりテレビを見つめてる星羅に『そんなコトぁ、わかってる!』と0が吠えた時だった。

 テレビ局の中継車ギリギリに低空飛行をキメた、黒竜から星羅らしき人影のほうが、一人。

 ひらり、と飛び降りた。

 そして、すたすたとアナウンサーに向かって歩いてゆく姿を、カメラが追う。

 麗し過ぎる、整った顔。

 星の光りを集めたような、長い金髪。

 これは、まさに。

 今、わたしの横にいる星羅と完璧に瓜二つで。

 そして。

 タオルケットを巻いただけで、ほとんど裸の星羅と違い。

 テレビの中の星羅は、きらきらと光り輝く、金と、白を基調にした、まるで『王子様』のような衣装を着ていた。

 うぁ……!

 に、似合ってる……じゃなくて!!



 お父さんっ!



 何やってるのよ!



 思わず叫んでも、わたしの声なんて、当然聞こえるはずもなく。

 星羅の姿をしたお父さんは、にこっと笑うと。

 驚いて固まったままのアナウンサーから、マイクをひょいと、取り上げてしゃべり出した。
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