はだかの王子さま
「……ゼギアスフェルのヴェリネルラ!」

「えっ!!」

 まさか、なんて聞き返すヒマもなかった。

 白い制服を着た、救急隊員、だと思ったヒトが。

 今まで、書類を挟むバインダーだと思ってた、大学ノートぐらいの大きさの灰色の板を、丸ごと刃に変えた。

 まるで三方向で切れる、刃の広い包丁か。

 分厚くて、先が平らな剣の先みたいだ。

 そんな凶悪なバインダーの板の上についている金属部分を伸ばし。

 紙を抑える輪の間に手を入れて、つかんだかと思うと!

 救急隊員は、わたしに向かって、元はバインダーだった刃物を振り上げて来た。

「っ……きゃ~~っ」

 何で、ヒトを助けるはずの救急隊員がわたしを襲うのよ!?

 ……って、その救急隊員、いつの間にか、白衣が黒服に変わってる!

 このヒト、偽物だ! と、思うヒマもなかった。

 だって!



 ざくっ!



 そんな重い音がして、わたしの顔の真横に刃が刺さったんだもん!

 どうして助かったか、なんて判らなかった。

 動かせば痛む身体を引きずって、更に逃げようとすれば。

 あっという間に黒衣の偽物救急隊員に追いつかれ、もう一回!

 びゅっと迫った刃は、わたしの胸に向かって、一直線に刺さる……!



 ……寸前。



 キュィーーン!


 キンッ!!


 なんて、ギターみたいな、金属が繊維に滑る音がしたかと思うと。

 目の前に迫った刃の軌道が、不自然に曲がり、それた!?

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