はだかの王子さま
「ですから。
 私は、この真衣さんを、次代のフルメタル家のご当主さまとして認め、お守りすることにしたのです」

 冷静に言い切る賢介のお母さんの声に、黒衣の偽隊員は、怒鳴った。

「また、そんな、言葉尻を取るようなことを!
 フルメタル家の当主はきちんと選ばれました。
 そして、去年、ローザさまが、その地位についたではありませんか!」

 だから、従うんだって言い張る黒服に、賢介のお母さんは言った。

「……それが、正しいことだと、あなたは本当に思ってますか?
 現在のフルメタル家の当主ファングさまのご意向を無視して、勝手に決まったことなのに?」

「ファングさまは、跡継ぎを決める会議には、ご出席できませんでした。
 そもそも、ファングさまは、背任の罪でこちらに流された、罪人です。
 おかげでシャドゥ家は、二つに割れ。
 何も罪が無いにも関わらず。
 一家の半分はファングさまに付き合い、この世界に流されました。
 ここで、フルメタル家が代替わりなさってローザさまに従えば、我々は、ビッグ・ワールドに帰れます!」

「……あなたは、ビッグ・ワールドに帰りたいがために、道理を曲げるのですか!?」

 ぴしゃりと言った、賢介のお母さんの言葉に、黒衣の隊員が、怒鳴る。

「もちろん、帰りたいですよ!
 この世界は、グラウェが濃すぎます!
 グラウェの力の制御に長けた、火、地、水、雷、風の最高位の方々か、単純な作りのゴブリン共じゃない限り!
 ただ、住んでいるだけで、寿命が縮むんですよ?
 そんなことは、あなたが、身を持って証明していることじゃないですか!?」
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