はだかの王子さま
う……うん。
とりあえず、わたしに刃が届かない……ことは、届かない。
それでも、目の前でひらつく凶悪そうな刃物に固まって動けないでいると、賢介のお母さんが、わたしを庇って、手を引いた。
「まったくもう!
救急隊がこのありさまなら、ドコまでこの世界にビッグ・ワールドの刺客が入ってるか、判ったもんじゃないわ!」
し……刺客ってなに!?
なんか、どっかの映画で見た限りでは『暗殺者』ってヤツよね?
そもそも、星羅も『ソレ』に狙われる可能性があるからって、わたしと一緒に居る予定だったのに。
純粋に、わたしだけを狙ってくるヤツもいるんだ……って。
そんなの、信じられない。
「おばさん……」
震えてしまう声で、賢介のお母さんを呼べば、彼女はごめんなさいね、と頭を下げた。
「本当は、真衣ちゃんにこんな不安な思いをさせないために私達は存在してるのに、ね。
身体の調子は、どう? 立てる? 歩ける?」
「……なんとか」
痛むけど、動けないわけじゃない。
ぴりりっと痛む全身にうーうー言いながら体を動かしてみれば。
その様子を見て、賢介のお母さんは、眉を寄せた。
「本当は、ちゃんとした『こっち側の』病院に行った方が良いんだけど、無理ね」
病院どころか。
午前中の住宅地で突然起きた騒ぎにあり得ないほど野次馬が集まって、ここから出て行くのも難しそうだった。