はだかの王子さま

極甘な誕生日……の予定

　
　初めて『彼』に出会ったのは、十年も前、フェアリーランドの地下だった。

　わたしは、そのとき、まだ小学一年生で。

　遊具の整備を担当している、技術部長の父さんの背中を追って、一般人が入れない、ランドの象徴、白薔薇の宮殿に入りこんだ。

　その時に、彼の住む、地下迷宮へと続く、階段をみつけたんだ。

　お父さんが、確かに真っ暗な地下へ入ってゆくのを見て。

　入り口にかけてあった、懐中電灯の灯りを頼りに追いかけたのに。

　お父さんを探せないまま、あちこちを歩きまわり。

　あっという間に、懐中電灯の電池が切れて、途方にくれた闇の中でのことだった。

　どっちを向いても、真っ暗闇だった。

　自分の手も見えない暗闇が怖くて……怖くて。

　しかも、この迷宮は、白薔薇宮殿だけじゃなく。

　フェアリーランドだけじゃなく。

　人工島、キングダム・リゾートの地下全部に張り巡らせている大きな迷宮なんだよって言ってたお父さんの言葉を思い出してた。

　そんなに広い迷宮なんて！

　もし、間違って、地上に出られなくなったらどうしょう！

　思いがぐるぐるまわり、動けずに困っていると、どこからか、ぼうぅっとした灯りが近づいて来たんだ。

　最初は、お父さんが気づいてくれたのかと思った。

　けれども、違う。

　懐中電灯とは違う、揺らめく灯り。

　太いロウソクを何本もつけた、豪華な燭台(しょくだい)を片手に掲げて歩いて来るのは……獣だった。

　ふさふさのしっぽと耳。

　ふっかふかの毛皮を着た『何か』に出会った。



「……あなたは、だあれ？」