はだかの王子さま
 わたしは、びっくりして、新しい手で自分の顔を触った。

 ……その感じは……案の定。

 今までに慣れた自分じゃない……ような…気……が……する。

 顔の作りなんて、もちろん判らないけれど。

 気になってた、ニキビとか。

 ホクロとか、触れ無いんだけ……ど?


 ちょっと待ってよ……っ!!


 誰か、ここにいませんか?


 か……鏡ください!


 鏡、鏡、鏡!


 だって、星羅の知らない所で、わたしが変わってしまったら。

 星羅が、わたしを見つけられないじゃない。

 この一面に咲く、ヴェリネルラの花の中。

 星羅が、わたしを見失ったらどうしよう!?



 ……なんて。



 だいぶ、混乱した上、夢の世界を漂っているようなふわふわな気分は。

 次に聞こえた現実の声で、いきなり覚めた。



『……娘(むすめ)よ。
 そなたは、一体何者なのだ?』

 ……。

 うん。

 すっ、と目が覚めた。

 本当に、ヴェリネルラの花園はただの夢で、こっちが現実だって判る。

 だって、わたしの耳に、ちゃんと聞こえたんだ。

 なるべく頑張って、優しく出してるような、声が。

 どっかで一度聞いたことのあるような気がする、そんな声で目を開いたのに……

 わたしは、まだ夢の続きを見ているような気がした。

 だって……ここ、ドコよ!

 目に映ったのは、砂糖つぼさんとデッキブラシ君の居る塔の上じゃなく。

 まったく見たことのない部屋の天井と……そして。

 知らない人が、わたしの顔を覗き込むように、眺めていたんだもん。
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