はだかの王子さま
「きゃ……っ!」

『何をする! ソドニ! この女(ひと)に乱暴は許さんぞ!』

 ソドニに握られた手首が痛み、思わず悲鳴を上げれば、王さまがその手をさっさと放せ、と怒鳴った。

『白薔薇宮殿の窓は、暗殺防止のため、及び下々の共謀や不正防止のため、その身分の高さによってその性質が変わるように出来ている。
 つまり、身分の低い者が窓辺に立てば、その姿を中にいる人間に知らしめ。
 身分の高い者が立てば、その存在を気配ごと隠してしまう。
 いつから、この娘が窓の外から大広間の中を眺めていたのかは知らぬが、あそこには、我がいたにも関わらず、我はこの娘の存在に気がつかなかったのだ!』

 他でもない我が。

 騒がしく空を飛ぶ、こちらの世界のヘリコプター、とやらを見に塔に登る気にならなければ、誰もこの女(ひと)を見つけることは出来なかったはずだ、と王さまは言った。

『つまり、この娘はビッグワールドの現王たる我より身分の高い血筋の者だ!
 ざっと見ただけでも、高貴な血筋に間違い無い顔立ちをしている以上、乱暴は許さない!』

 それでなくとも、横になっている娘を乱暴に扱うなど、男の風上にもおけぬ!

 なんて、王さまは意外に女の子には優しいらしい。

 ソドニの手を外して、わたしを庇ってくれた。

 けれども、ソドニは、あえて食い下がる。

『しかし、この娘は、自分の事を『内藤真衣』と名乗りました!』

『だから、何だと言うのだ!
 古い王家の血筋にも、グラウェの神官の血筋にも『ナイトウマイ』と言う者はいないぞ』

『この娘の父、遊具担当の整備士長、内藤鋼牙は、フルメタル・ファングのこちら側での身分と名前です!
 フルメタル・ファングの娘は、ゼギアスフェルさまのヴェリネルラじゃないですか!』

『なんだと!』
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