はだかの王子さま
「うぁ……」

 すぐに持って来られた鏡を見て、わたしは息を呑んだ。


 コレ、一体、ダレですか……?


 横になった状態から、半身を起こしただけで、くらくらと回るめまいと戦いながら、わたしは、必死に起き上がり……見た。


 少しすくえばサラサラと音を立てる、長い、絹糸のような金髪。

 アーモンド形の大きな瞳は、星羅と同じ琥珀色で……

 顔全体のつくりが、もはや、人間離れしてる。

 まるで最高級のお人形さんみたいに、完璧……だ。

 そう言えば、この顔……一度魔剣0の刃に映ったような気がしたけれど……

 その時は、まるでお化けだって驚いただけで、まさかそれが自分の顔だったなんて思いもよらなかった。

 そこまで、考えてわたしは首を振る。

 こんなの、絶対わたしじゃない!

 そりゃあ、ね。

 キレイな星羅に見合うだけの、キレイな顔、欲しいなって思ってた。

 もう少しだけ、わたし、キレイだったら。

 自信がついて、星羅の顔もちゃんと見られるかもって思ってたけれど……

 この顔は、ナニ?

 変わるんだって、もうちょっと、限度ってモノがあるでしょう?

 変わり過ぎて、すごく怖い……!

『この顔……わたしじゃない……』

 半ば呆然とつぶやいたわたしに、王さまは、心配そうな顔をした。

『自分の顔ではない?
 そなた、記憶に混乱があるのか?』

 う……ん。

 記憶はちゃんとしてる、って思う。

 朝早く『蒼のセイラ』に変な風に起こされて。

 お父さんが騒ぎを起こして……って、内容めちゃくちゃ盛りだくさんな一日だったけど。

 どうやら、大広間の窓で眠り、気を失っている時間ってそんなに経っていないようだった。

 星羅も、お父さんも、美有希も、ハンドもゴブリンも、くるくるその姿を変える日だったけれど、まさか。

 この同じ日に、わたし自身が別人になるなんて……!
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