はだかの王子さま
「どうしたら、人間になれるの?」

 そう聞いたわたしに。

 獣が少しだけ顔を上げて、応えた。

「……僕が、人間の心を取り戻すことが、できたなら」

「……え?」

「多分、誰か。
 自分自身よりも大切な。
 とても、とても大好きなひとができたなら。
 ……人間になれるかも……しれないね?」

「ふうん?
 だったら、そんなひとに、早く出会えると、いいね」

 特に何も、考えず。

 あいづちを打ったわたしに『彼』は深く頭を下げた。

「……絶対、無理だ」

「なんで!」

 驚いて聞いたわたしに獣は小さくささやくように言った。

「それは、僕が大切なヒトを……この手で燃やしてしまったからだよ……」

「……燃やした……?」

「……うん。
 どうにもならないことが、起こってね。
 僕は、大事なヒトを灰にしてしまったんだ」



 ……だから、これは、罰。



 そう言って、彼は悲しそうに、真っ暗闇の天井を見上げた。

「もう、僕は誰か好きになりたくないよ。
 また、新しく好きになった、その人を傷つけてしまうかもしれないから。
 魔法使いは怒って、僕のヒトの姿を取り上げて行ったけど。
 もしかしたら、これでよかったのかもしれない」

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