はだかの王子さま
「違いますよ」

「……え」

「『地』の最高位のソドニが重力をいじって水の壁を作ってます。
 船は時際に水の壁に垂直に張り付いているんですよ。
 その事実を、王が、幻影の力でごまかして、まるで普通の海面の上を航行しているように見せているんです。
 私たちの、この追いかけっこをこちらの世界の人間には、見せないついでにやっているに過ぎません」

「じ、じゃあ、この水の壁は……?」

「本物です。
 もし、これに羽が触れたら……私の羽は、水に濡れたら、飛べません」

「うそ!
 ハンドは、今!
 水の壁ぎりぎりを、すっ飛んでるんじゃない!」

「そうですね。
 けれども、狂った重力の中では、これが一番楽に飛べるポジションなんですよ」

 そうですねって! これ、そんなに余裕のあるものなの!?

 ハンドはなんだか、簡単に解説しているけど、これって絶体絶命って言うやつじゃないの!?

「そ、それで……っ! ハンドはこれからどうするつもりなの!?」

 自然と血の気が引くわたしに、ハンドは冷静に言った。

「本土から人工島キングダムリゾートに渡る橋のちょうど裏側に、迷宮の入り口のひとつが開いてます。
 そこに、姫とゼギアスフェルさまがお待ちです」

 白薔薇宮殿の地下迷宮!

 なるほど、そこなら工房と部屋がある星羅の『庭』だし。

 ビッグワールドに続く大扉があるのなら、それを守るべき、門番のフルメタル家とフルメタル家に仕えるシャドゥ家の独壇場だ。

 これならならば、いくら王さまにこっちの世界の協力者が、山ほどいようと手が出せない。

 そんな、ハンドの説明にうんうんとうなづいたときだった。

『待て!』

 なんて声が、びっくりするほど近くに聞こえて、わたしは後ろを振り返る。 

 王さまの声だ……! 

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