はだかの王子さま
 実際。

 星羅のコトは、とっても大好きなんだけど。

 人目が怖くて、ステキ過ぎる彼氏と同じ席になんて、どうしてもつけない。

 思わず、彼の目の前でくるり、と回れ右して出口に向かおうとしたら。

 わたしの手を、ぱしっと音を立てて星羅は掴んだ。

「逃げないで? 真衣。
 僕は、ずっと、君が来るのを待ってたんだ」

「せ……星羅……っ」

 手を放して……?

 じゃないと、周りの視線が、痛いの。

 何でもない場所で、つり合わないカレカノが、いちゃいちゃしてる、なんて思われたくないし……!

 逃げようとするわたしを無視して、星羅は、周りの目を全然気にせずに、そのまま、ぐいっと手を引いた。

 その、強い力に、わたしは抵抗できずに、バランスを崩す。



「きゃ……! わわわわっ!」



 なんて。

 恥ずかしい悲鳴を上げて、倒れこむわたしを星羅はふわり、と抱きとめた。

 そして、ベンチシートになってる自分の席の左隣に座らせると、にこっと笑う。

「真衣の席は、ここだよ?」

「う~~」

「嫌なら、僕の膝の上でも良いけど?」

「そ、それは、勘弁して!」
 
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