はだかの王子さま
そう言って、彼は。
手に持った燭台から、何本もあるロウソクのうち一本を、ロウ受けごともぎ取ってわたしにくれた。
「ほら、灯りを分けてあげる。
だから、これを頼りに帰ればいい。
出口は、すぐだよ。
角を二回曲がれば、上にあがれる階段に出るから」
『だから、君も、もう、ここへ来ちゃダメだよ』
それは二度と来るな、って言う拒否だったはずなのに。
まるで、泣いているようなその声に、わたしは、どうしても聞きたくなったことがあったんだ。
古い、アンティークの燭台の一部を受け取って。
今にも闇に消えて行きそうな『彼』に向かって叫んだ。
「ち、ちょっとまって!!
ねぇ、名前は!?
名前は、なんて言うの……?
わたしは内藤 真衣(ないとう まい)!
真(しん)の衣(ころも)って書くのよ!
あなたの名前は……!?」
「僕?
僕の名前なんて、知らなくていいよ」
「でも!」
ここで、肩を落としている彼を、そのまま、見捨てて行きたくなかった。
名前一つ知らないまま、知らん顔して、行きたくなかった。
そんな思いで必死になったわたしに、彼は、ため息を一つついて、言った。
「僕の名前は……
セイラムド・フォン・ゼギアスフェル。
『世界を滅ぼす覇王(はおう)の剣』っていう意味だよ」
手に持った燭台から、何本もあるロウソクのうち一本を、ロウ受けごともぎ取ってわたしにくれた。
「ほら、灯りを分けてあげる。
だから、これを頼りに帰ればいい。
出口は、すぐだよ。
角を二回曲がれば、上にあがれる階段に出るから」
『だから、君も、もう、ここへ来ちゃダメだよ』
それは二度と来るな、って言う拒否だったはずなのに。
まるで、泣いているようなその声に、わたしは、どうしても聞きたくなったことがあったんだ。
古い、アンティークの燭台の一部を受け取って。
今にも闇に消えて行きそうな『彼』に向かって叫んだ。
「ち、ちょっとまって!!
ねぇ、名前は!?
名前は、なんて言うの……?
わたしは内藤 真衣(ないとう まい)!
真(しん)の衣(ころも)って書くのよ!
あなたの名前は……!?」
「僕?
僕の名前なんて、知らなくていいよ」
「でも!」
ここで、肩を落としている彼を、そのまま、見捨てて行きたくなかった。
名前一つ知らないまま、知らん顔して、行きたくなかった。
そんな思いで必死になったわたしに、彼は、ため息を一つついて、言った。
「僕の名前は……
セイラムド・フォン・ゼギアスフェル。
『世界を滅ぼす覇王(はおう)の剣』っていう意味だよ」