はだかの王子さま
 ちょっと!

 ちょっと!!

 王さまは、何を言っているのよ!

『わたしが星羅のもの』では、ありえないって!?

 王さまは、わたしに会ってから、ずっとそんなことばっかり言ってたから。

 わたしの気を引くただのでまかせだと思ったのに!!

 けれども、王さまの言葉を聞いた星羅は、わたしに触れようとした手をびくっと引っ込めて、そのまま、うなだれた。

 長い、月光の髪がさらさらと音を立てて、崩れ。

 星羅のキレイな顔を覆い、その表情を隠す。

『星羅……!?
 なんで!?』

 イヤな予感に、わたしも星羅の前に膝をつき。

 その髪に触れ、すくおうとした時だった。

 わたしのすぐ耳元で、王さまがささやいた。

『ゼギアスフェルは、自分の立場をわきまえておるのだ』

『……!』

 気持ち悪い……!

 王さまの息がかった感触が嫌で、わたしは耳を押さえて、その場所を飛び離れた。

 そんな、わたしの様子を見て。

 星羅の顔をした王さまは、咽の奥で、くくっと笑う。

『そう、我を毛嫌いするものでは無いぞ?
 娘よ。
 そなたも、真実を知れば、ゼギアスフェルより我の方が百倍良いと思うだろう』

『思わないわよ!
 絶対に!!』

 叫ぶわたしに、王さまは、笑う。

『そうかな?
 ゼギアスフェルの正体が、そなたの本当の両親を殺した男、だとしても?』

『……え?』

『娘よ。
 お前の顔立ちは、前王家直系の顔立ちだ。
 そして、前王と王妃を焼き殺し、我を王に押し上げ。
 自らも、第一王位継承権をもぎ取った王子は、どこの誰だ?』

『まさ……か……』

『ゼギアスフェルは、その身分を手に入れるために、そなたの両親を殺めたのだぞ!?
 そんな男を、ナイトウマイは愛する事が出来るのか!?』








 
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