はだかの王子さま
 そう言って、美有希は、泣き笑いみたいな顔になった。

「ごめんね?
 許してくれなくても、謝ろうと思って……
 真衣が、食事も取れないで寝てるって聞きつけて、メイドさんと入れ替わって来たの……」

 美有希のその様子に、わたしのほうも、じわっと涙が出てきた。

「わたしの方こそ、何も知らないで……」

 美有希の思いが詰まった上に成り立ってた暮らしを『普通』だと思ってくらしてた。

 それは、お父さんも、星羅も教えてくれなかったことだったけれども。

 だからと言って、わたしが被害者だって、美有希をなじれることじゃなかったし。

 何よりも。

 わたし、お父さんと話をしている美有の声、聞いてる。

 ハンドさんと話していたことも知ってる。

 だから、美有希には、まだ出会ってそんなに長い付き合いじゃなかったけれど、小さな絆を感じてた。

 だからわたし、うつむいている美有希に、手を伸ばしてた。

「ありがとう、美有希
 わたしを心配して、ここまで来てくれたんだ……」

 なんて。

 心から感謝して美有希の手を握ってた。

 その手を美有希が、そっと握り返して、二人で顔を見合わせば。

 なんか、ほっとして、笑えた。

「気がつけば、二人とも。
 血がつながってないのに、姉妹だったんだね」って。

 楽しい方向に心が動いて、フェアリーランドの白薔薇宮殿のてっぺんが。

 毎日通う学校の、教室みたいに見慣れた風景に変わったような気がしたんだ。

 そして、ひとしきり二人で笑って……わたしは、ふと気づいた。

「美有希は、メイドさんに入れ替わってここに来たんだよね?
 でも、その服……どう見ても『メイド』どころか『お姫様』っぽい格好に見えるよ?
 それに、美有希とハンドさんも、白薔薇宮殿か、地下迷宮のとこかに捕まえておいたって王さまが言ってたし……」

 目をしばたたかせれば、美有希が、そっと笑った。

「スパイダーに連れてきてもらったの」

「賢介に?」
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