はだかの王子さま
 最初にデッキブラシ君に驚いて、家を飛び出したとき。

 星羅はともかく。

 お父さんも、賢介も仕事場からそのまま抜け出してきたような格好をしてたっけ。

「でも、わたしを逃がしたら今度こそ王さまが何をするか……」

 怖くなったわたしの質問に、美有希は肩をすくめた。

「外見ばっかり気にして、思慮の足りない、わがままな莫迦王よね。
 そんなのに、あたしは負けないわ!
 高い身分が欲しかったからって、あんなヤツに『初めて』をあげないで良かったし」

「美有希……」

「だから、大丈夫だって。
 あたしには、ハンドを筆頭に、頼りになるシャドゥ家がついてるし。
 そうよ、ねぇ。
 わがままな王さまより、どんなところにだって必ずついてくるって言ってくれたハンドの方がずーーっと男前だわ」

 もっとも、ハンドは、あたしの『配下』の上。

 素になると、あたしを『お嬢ちゃん』扱いするハンドとは、例え『ごっこ遊び』としても『恋人同士』には、ならないんだけどね。

 なんて言って、美有希はふふふっと笑った。

「だから、真衣にはゼギアスフェルさまと頑張って欲しいのよね!
 本人同士ラブラブな上。
 お父さまも、認めてくださっているのでしょう?
 あとは、ちょっとした障害を乗り越えて、二人で幸せになって欲しいのよ!」

「う……
 う~~ん……ちょっとした障害、ね」

 応援してくれる美有希は、とてもうれしかったけれど、素直に『そうよね♪』なんて、絶対、言えない。

「星羅が両親を……っていう所を無理やり棚上げしたとしても。
 わたしには、自分の家か、白薔薇宮殿の地下工房、星羅の部屋にしか行くあても、ないし……」

 例え、一瞬逃げても、そこらをあても無くふらふらしていたら、王さまや、その手下たちにあっという間に、見つかっちゃうと思うし。

 なんて言ったら、美有希の目が、キラリ、と光った。




「王がジャマなら、排除しちゃえばいいのよ」



 ……え!?


 今、美有希は、なんて言ったの!?
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