はだかの王子さま
 そんなわたしの叫びに、美有希はふ……と笑った。

「やっぱり、こっちの世界の人間は甘いわね」

「美有希!」

「……でも、そんな真衣のことが、あたしは好きよ」

 言って、美有希はわたしの手をそっと取った。

「誰も傷つかない、そんな方法があるというのなら、いいわよね……
 フルメタル家とシャドゥ家は、もちろん真衣たちに全面協力するわ。
 けれども、まずは、ここを出ましょう。
 そして、現実的で、具体的な今後を考えないと!」

 ……そんなにわたしの言うことは、現実的じゃないのかな?

 考え方が『いかにもこっち側のヒト』で『変』なのかな?

 ひそかに落ち込むわたしのことは、気がつかず。

 美有希は、ちょっと長居しすぎたわねって言いながら、わたしの手を引っ張った。

 座っていたベッドから、降ろそうとしてくれたんだ……けど。

 わたし。

 デッキブラシ君につかまって、白薔薇宮殿の大広間の窓辺に降り立った辺りから、なんか変だった。

 お腹が減りすぎているから……なのかな?

 それとも、外見が変わってしまったせいなのかな?

 まさか、長いドレスのすそを、自分の足で踏んづけたから……って言うことは無いよね?

 三つとも当たりだったらもっとイヤ、だったけれど!

 確かなことは、ベッドから出て、立ち上がろうとして、力が抜けちゃったってこと。

 わたしは美有希が引っ張るそのままに、立ち上がろうとしたのに。

 大きな天蓋つきのお姫さまベッドのすぐ脇で、がくっと、膝をついてしまった。

「真衣……!」

 大丈夫……!? って顔を覗き込む美有希につかまって、わたしはようやく立ち上がり、ぽすっと、今で座っていたベッドの端に腰を下ろした。

「なんか……ちょっと無理っぽい」

「この部屋のすぐ外には、スパイダーが居るのよ?
 そこまで、なんとか……歩ける?」

「その部屋の扉までが、はるか地平線の果てにみえる……かも」

 そう、素直に言ったときだった。

 扉の向こうから、賢介の声が聞こえた。
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