はだかの王子さま
 やっぱり、ソレが目的じゃない!

 王さまは、相変わらず上機嫌でうんうん頷いているけど!

 本っ当に、冗談じゃないわ!

 わたしの誕生日祝いに、何がいいのか、なんて。

 本人の意見も聞かずに、連れてきたソドニと一緒に、あーでもない、こーでもないと話し合っている声を聞きながら。

 わたし背中に冷や汗をかいていた。

 頑張らなくちゃ、わたし。

 星羅に会えない。

 王さまに、ビッグワールドへ連れ去られて、二度とこっちの世界に返れなくなっちゃうかもしれない……!

 どうすればいいのか。

 本っ当、どーしょう!

 相談するヒトも無く、必死に考えているわたしに、王さまは、のーてんきに声をかけてきた。

『それで、ナイトウマイの、誕生プレゼントのリストだが……』

「そうよ、いいことを思いついた!」

 ようやくひらめいた作戦に日本語で叫んで、あわてて、ビッグワールドの言葉に直す。

『わたし、今、手に入る服の中で、一番キレイな完全オーダーメイドのドレスがほしいです。
 誕生日プレゼントに、ソレ、ください!』

『完全オーダーメイドのドレス?
 機械や乗り物については、前々から興味があった故、金を払えばすぐ納品出来る業者を押さえておるが……
 女物の服、か。
 さすがに、こちらの世界では、今から注文して、採寸からはじめ、型紙を作り。
 明日には出来上がる腕の確かな仕立て屋の心当たりは無いぞ?』

 わたしの言葉に、今まで上機嫌だった王さまは初めて眉間に皺を寄せ。

 隣に居るソドニは、苦く笑った。

『いえ、そんな無理を言える仕立て屋なら、一人だけ、ご存じのはずですよ。
 たぶん……ゼギアスフェルさまなら出来るでしょう』

『なるほど、そう言うことか』

 ソドニの言葉に、王さまも気がついて、不機嫌そうに言った。

『それほどまでに、ゼギアスフェルに会いたいか?』

『もちろんよ!』

『例え、ヤツが自分の両親を直接殺した相手だとしても?』

『う……』

 一瞬、言葉の詰まったわたしに、王さまは、ひらひらと手を振った。
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